HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン(子宮頸がんなどの予防ワクチン)について
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症と子宮頸がん
ヒトパピローマウイルス(HPV)とは??
→こちらもご参照下さい。(厚生労働省Hp)
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。
主に性交渉で感染します。
子宮頸がんを始め、肛門がん、膣がんなどのがんや尖圭コンジローマ等多くの病気の発生に関わっています。
特に、近年若い女性の子宮頸がん罹患が増えています。
日本では、ほぼ100%の子宮頸がんでHPVが検出され、その中でもHPV16、18型が50-70%を占めます。
子宮頸がんとは???
子宮頸がんとは、子宮の出口に近いところにできるがんです。
子宮頸がんになる原因は、上記の通り
HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスが関係しています。
HPVに感染すると、すぐにがんになるわけではありません。
持続的に感染することで進行していきます。
厚生省ホームページ リーフレットより→こちら
子宮頸がん自体は、早期に発見されれば予後の悪いがんではありません。
しかし、将来妊娠に影響するような手術が必要となってしまうこともあります。
HPVワクチンと子宮頸がん検診
そのHPV感染を予防するために
HPVワクチンは2006年に欧米で接種が始まりました。
日本では、2009年に承認されワクチン接種が始まりました。
しかしワクチンで予防し得ない型による子宮頸がんもあるため、早期発見のための子宮頸がん検診もとても大事です。
ワクチン接種と検診二本立てで子宮頸がんから身を守りましょう。
厚生省ホームページ リーフレットより→こちら
20歳になったら、子宮頸がんを早期発見するために、子宮頸がん検診を定期的に受けることが重要です。
ワクチンを接種していても、2年に1回子宮頸がん検診を受けましょう。
HPVのワクチンの種類について
現在日本で使われているワクチンは主に3種類です。
●定期接種
「サーバリックス(2価)」と「ガータシル(4価)」の2種類
★HPVワクチンの定期接種の対象者は小学校6年〜高校一年生相当の女子です。
●任意接種
「シルガード9(9価)」
★後述しますが「ガータシル(4価)」は男子は任意接種で接種できます。→こちらも参照を(Know VPD!)
もう少し詳しく見ていきます。
このように、それぞれ、同じHPVワクチンでも予防できる型が違います。
子宮頸がんの原因となるウイルスの型のほとんどが16型と18型ですので、全てのワクチン共にその予防効果があります。
現在、定期接種(国から助成金が出て、対象者は無料で受けられるもの)になっているのは
「サーバリックス(2価)」と「ガータシル(4価)」のみです。
それぞれ以下の特徴があります。
・「サーバリックス(2価)」
・HPV16/18型の感染予防
・ サーバリックスの接種により、自然に感染した時の数倍の量の抗体を少なくとも9.4年維持できることがわかっている。
・「ガータシル(4価)」
・HPV6/11/16/18の感染予防
・HPV6/11により、尖圭コンジローマの予防効果もある
●定期接種どちらのワクチンも公費で接種できますが、途中から別種類のワクチンに変更することはできませんのでご注意を!!!
定期接種の受け方(間隔)
厚生労働省ホームページより→こちら
「シルガード(9価)」について
シルガード9については→こちらに詳しくお話ししております。(2022.6月更新しました。)
・「シルガード(9価)」
・定期接種の対象となっている2価、4価ワクチンの適切な接種により、子宮頸がんの60-70%の原因となるHPV16,18型の感染は予防できますが
それ以外の予防は難しいとされていました。
この「シルガード(9価)」は9つの型(6,11,16,18,31,33,45,52,58型)をターゲットにしており
WHOでもその安全、有効性が認められ米国、オーストラリア、中国など世界80以上の国ですでに認可されています。
・9価ワクチンは普及すれば子宮頸がんの90%あるいはそれ以上の予防が可能となると期待されています。
・日本でも2020年7月に認可がおり、接種は可能です。
・しかし元々高価な値段設定の上、定期接種の対象ではないため自費となってしまうところがネックです。
・初回接種ののち2か月後に2回目、6か月後に3回目を接種します。
接種間隔は多少前後しても問題ありませんが、一年以内の接種完了が望ましいとされています。
★HPVワクチンは同じ種類で3回の接種を終えてください。途中でシルガード9への変更することはできません。
任意接種の場合の価格(参考です。クリニックによって異なります。)
繰り返しになりますが、HPVワクチンの定期接種の対象者は小学校6年〜高校一年生相当の女子です。
時期を越してしまうと、自費になりますので要注意です。(結構高額です。)
余裕を持った計画で3回受け終わるようにしましょう。
自費(任意接種)の場合の価格を参考までに載せておきます。(多少変動がありますので、直前にご確認いただけると幸いです。)
・「サーバリックス(2価)」 18000円/回
・「ガータシル(4価)」 18000円/回
・「シルガード(9価)」 32000円/回
男子のHPVワクチンの接種
HPV感染は男女間で感染を繰り返すため、男女にワクチン接種をすることで感染の広がりを抑えることができます。
またHPVは子宮頸がん以外にも、中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなど男女を問わず様々ながんの原因になります。
男性のワクチン接種の目的は、
男性本人のHPV感染による病気の予防とともに
自分が感染源とならないことで将来のパートナーを子宮頸がんなどのHPV感染症から守ることがあります。
実際に男子へのワクチン接種は多くの国で推奨され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど20か国以上の国で公費接種が行われています。
日本では、2020年12月から任意接種で男性が4価ワクチンを受けられるようになりました。
2020年12月、HPVワクチンのガーダシルの適応が、男性にも拡大されました。
但し、繰り返しになりますが、任意接種ですので自費になります。(上記価格参照)
HPVワクチンのリスクについて
HPVの2種類のワクチン共に接種部位の疼痛、発赤、腫脹の起きやすいワクチンです。
頻度は少ないですが、重篤な副反応の報告もあります。
アナフィラキシー、ギランバレー症候群、急性散在性脳脊髄炎などです。
「接種の積極的な勧奨」の一時中止(2013.6月)実質的な再開(2021年2月)という歴史
HPVワクチンの歴史にも触れておかなくてはなりません。
2013年4月に予防接種法に基づきHPVワクチンは定期接種になりました。
しかし、その僅か2ヶ月後にワクチン接種後の副作用のリスクが懸念されたために
厚生労働省は積極的接種勧奨を取りやめ、接種率は70%から1%にまで激減しました。
以下をご参照ください。
積極的な推奨が一時中止されて約8年間そのまま積極的な推奨はされていない状況でしたが
各方面から、やはりワクチンの有効性について支持する意見と再開を望む声が上がっておりました。
・海外団体からの意見
2015年12月、WHOが「若い女性が本来予防しうるHPV関連がんのリスクにさらされたままとなっている日本の状況を危惧し、安全で効果的なワクチンが使用されてないことにつながる現状の政策決定は、真に有害な結果となり得る」と警告しました。
・国内関連学会からの意見
2016年4月、予防接種推進専門協議会から、小児科学会、産婦人科学会、日本プライマリケア連合学会、参加学会の15団体および2学術団体を合わせた17団体連名で「ヒトパピローマウイルスワクチンの積極的な接種を推奨する」と声明を発表しました。
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/000680905.pdf
ぜひ、こういった背景ご理解し、
多方面から情報を収集し、ご納得いく形で
接種するかどうかご判断くださればと思います。
【参考資料】
厚生省のホームページもご参照ください。→こちら
リーフレットも用意されています。