HPV(ヒトパピローマウイルス 子宮頸がん)ワクチンの中でもシルガード9(9価ワクチン)について詳しくご説明します。

先日、子宮頸がんワクチンの中でも、9価ワクチンである「シルガード9」の接種ご希望の方がおられました。
当クリニックでは、子宮頸がんワクチンは
公費で受けられる4価ワクチンの「ガータシル」が主流でしたので
あまり深くお話しして来ませんでしたが
これを機に「シルガード9」についても少し詳しくお話ししてみようと思います。
HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)については、以下のブログ記事に詳しく記載していますので、ぜひ、ご参照ください。
子宮頸がんとは???
子宮頸がんとは、子宮の出口に近いところにできるがんです。
子宮頸がんになる原因は、上記の通り
HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスが関係しています。
このウイルスは性交渉により感染します。
厚生省ホームページ リーフレット
HPVワクチンと子宮頸がん検診どちらも大切
ワクチンで予防し得ない型による子宮頸がんもあるため、早期発見のための子宮頸がん検診もとても大事です。
ワクチン接種と検診二本立てで子宮頸がんから身を守りましょう。
厚生省ホームページ リーフレット
20歳になったら、子宮頸がんを早期発見するために、子宮頸がん検診を定期的に受けることが重要です。
ワクチンを接種していても、2年に1回子宮頸がん検診を受けましょう。
HPVのワクチンの種類について、違いは?

現在日本で使われているワクチンは主に3種類です。
- 定期接種
「サーバリックス(2価)」と「ガータシル(4価)」の2種類
★HPVワクチンの定期接種の対象者は小学校6年〜高校一年生相当の女子です。
※ 今、希望が多いのは「ガータシル」です。 - 任意接種
「シルガード9(9価)」→今日の主役はこのシルガード9です。
★「ガータシル(4価)」は男子は任意接種で接種できます。→こちらも参照を(Know VPD!)
下図のように、それぞれ、同じHPVワクチンでも予防できる型が違います。

シルガード9について
さて、ここからが本題です。シルガード9について、くわしくご説明していきます。
9価ワクチン(シルガード9)と他のワクチンとの違いは?
定期接種の対象となっている2価、4価ワクチンの適切な接種により、子宮頸がんの60-70%の原因となるHPV16,18型の感染は予防できますがそれ以外の予防は難しいとされていました。
この「シルガード(9価)」は9つの型(6,11,16,18,31,33,45,52,58型)をターゲットにしており、WHOでもその安全、有効性が認められ米国、オーストラリア、中国など世界80以上の国ですでに認可されています。
9価ワクチンは普及すれば子宮頸がんの90%あるいはそれ以上の予防が可能となると期待されています。
日本でも2020年7月に認可がおり、接種は可能です。
しかし元々高価な値段設定の上、定期接種の対象ではないため自費となってしまうところがネックです。
接種対象年齢は?
9歳以上の女性が対象です。
性交渉によりウイルスの感染するので、可能ならば性交渉歴がないうちの接種がおすすめです。
CDCは26歳までの接種を薦めております。
副反応や安全性は違うのか?
従来のHPVワクチンに比べてシルガード9の方が注射部位の疼痛・腫脹が出やすいことがわかっています。
全身症状の副反応の頻度に差はなく、安全性に関しては従来のものと変わらないとされています。
接種間隔
シルガード9は、初回接種(1回目)の2ヵ月後に2回目、その6ヵ月後に3回目を接種します。
ワクチンの効果を得るために、3回目まできちんと接種してください。
MSD シルガード9の接種方法
当院での費用(自費の場合の比較)
「サーバリックス(2価)」 18,000円/回
「ガータシル(4価)」 18,000円/回
「シルガード(9価)」 32,000円/回(税込)
※3回の接種ですので合計で 96000円の自己負担が発生します。
「ワクチンQダイアリーの登録」が必要です。
シルガード9を接種される方は全例、「ワクチンQダイアリーの登録」が必要です。
自宅で事前に登録いただくか、当日にスマートフォンやタブレット端末などをご持参いただいて登録する必要があります。
「ワクチンQダイアリー」の処理方法がわかりにくい場合、当院にて登録代行させていただきます。お気軽にご相談ください。
シルガードは、新しいワクチンなので現時点で、全ての接種者を、国が把握する事になっております。
少なくとも販売後2年間は全例把握、全例追跡の対象となっております。
万が一健康被害が発生した場合の『医薬品副作用被害救済制度』を受けられる重要な登録・情報管理ですので、ご協力をよろしくお願いします。
接種までの流れ
以下に接種までの一般的な流れを記載しています。
以下が正式な手順ですが、複雑で難しい場合は当院で登録代行できますので、お気軽にご相談ください。
(接種当日)「接種医」の登録
「ワクチンQダイアリー」の「接種医登録」機能を使い、接種する医師(安奈・勝司)を登録していただきます。

接種する医師の「二次元コード(QRコード)」もしくは16桁の「接種医コード」をお伝えしますので、上図の画面から登録を行っていただきます。
接種の実施
登録した接種医がワクチン接種を行います。
次回の予約
最終回(3回目)以外の時は、次回の予約日時を決定します。
この際、「ワクチンQダイアリー」に次回接種予定日を登録しておくと、事前に「ワクチンQダイアリー」からアラートが出されますので、登録をお薦めします。
より、詳しい手順については、以下の資料もしくは動画をご確認ください。
よくあるQ&A
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ガータシルを2回接種したのですが、3回目は「シルガード9」にしたいのですが?
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途中でシルガード9に変更することはできません。
各HPVワクチンの互換性に関してはデータがなく、安全性や接種後の有効性も実証されていません。
その為、HPVワクチンは同じ種類で3回の接種でお願いします。
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性交渉の経験があれば、子宮頸がんワクチンはもう意味がありませんか?
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確かに、HPVワクチンは、すでに感染してしまったHPVを排除する効果や、発症してしまったHPV関連疾患の進行を止める効果はありません。
その為、性交渉未経験のうちに接種を終えておくとワクチンの効果が最も期待できます。
でも、すでに何らかのHPVを有している人でも、全ての型のHPVウイルスにかかっているということは考えにくいのです。
ワクチンにより別の型のHPV感染を予防することは可能ですので、接種の意義はあり、接種期間中の性交渉を禁止することもありません。
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HPVワクチンの接種に年齢の上限はあるの?
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CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は26歳まではHPVワクチン接種を推奨しています。
27歳以上については、個々のライフスタイル(性交渉歴など)によって異なります。HPVワクチンは、すでに感染しているHPVには効果がありません。
接種して以降の新たなHPV感染を防ぐための接種です。今後新たなパートナーができる可能性がある場合には接種の意義があるといえるでしょう。
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妊娠してますが、接種できますか? / 途中で妊娠しましたがどうしましょう?
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シルガードは妊婦さんへの接種は安全性が確立しておりません。その為、妊娠中の接種は推奨されません。
もし接種途中で妊娠が判明した場合も、続きは出産後まで接種を延期してください。
再開する時は、最初から接種をやり直す必要はありません。出産後に続きを接種しましょう。
終わりに
ワクチンは全て、保冷ワクチンのため、発注をしたら返品ができません。
シルガードは特に、現在では任意接種ですので、接種される方は少ないのが現状です。
高価なワクチンでありますので、接種されるどうかは、十分ワクチンについてご検討のうえお申し込みください。
ご不安な点は、クリニックにぜひご相談くださいね。